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YOASOBI 「THE BOOK」を通して、現代のJ-POPを考察してみた。

YOASOBIとは?

今、1番支持されているユニットと言ってもいいYOASOBI。ボーカロイドプロデューサーのAyaseとシンガーソングライターのikura(幾田りら)による2人組ユニットです。

ご存知の方も多いと思いますが、彼等は『小説を音楽にする』というコンセプトを持っています。ソニーミュージックが運営する小説&イラスト投稿サイト「monogatary.com」に投稿された小説を音楽にするプロジェクトが、元々のきっかけのようですね。二人の若き才能が出会うことで、素敵な音楽が生み出されることになりました。

↓YOASOBIのトラックリストです。

YOASOBIに若者が魅了される理由

話題の楽曲「夜に駆ける」も『タナトスの誘惑』という小説を原作としたものです。私はこの曲はYou Tubeで知りました。スルメ曲ですよね。何回聞いても聞き飽きません。自宅のDTMで作り込まれたキャッチーで躍動感あふれるサウンドは素敵です。

サウンドに反して、小説を元にした世界観はダークなものだったりしますよね。ネガティブを抱合した世界の方が、今の若い世代にとってリアルを感じられるのかもしれません。この楽曲の持つストーリーは、特に10〜20代の若者が内面に抱く不安や葛藤にストレートに響いたのでしょう。人のダークサイドというのは、不思議なもので興味を引く題材であったりもします。実際には踏み出しきれない世界というのは、憧憬に価するのかもしれませんね。

プロデューサーのAyaseは、こう言います。

「(曲の元になる作品を)理解していないと当然アウトプットはできないので、理解しやすくしたり、説明しやすくさせたりしているのは、もしかしたらあるかもしれないですね。余白を作るという意識も一応あるんですけど、わかりやすい言葉や日常的な言葉を曲に入れることは、すごく意識してます。聴く人が曲のストーリーとまったく同じ状況にいることはほぼないと思うので、そこを意識して余白を残しすぎると、『なんかわかるわ~』っていうところで止まっちゃうと思うんですよね」

「それだと『共感』まではいかなくて、楽曲やストーリーに参加してる感覚が薄れてしまう。なので、共感できる言葉をわかりやすくピンポイントで配置して、より物語の中に入っていきやすいようにするということは、曲を作る上で意識してます」

曲の中に物語を持たせ、それに対する共感を重視した世界観を作ることを意識してるようですね。彼等は分かりやすいストーリーを作ることで、若者のリスナーに魔法をかけているわけです。

THE BOOKに対する批評

1月に宇野維正氏のツイートが話題になっていましたね。

「アルバム通してちゃんと聴いた。この気恥ずかしさは嫌いじゃないんだけど、このビートの単調さと音色・音圧のショボさが世間で許容されてるのはちょっと信じたがたい。少なくとも家のスピーカーで聴く音楽じゃないですね」

……はい、これファンが聞いたら怒るコメントですね。実際、これにはいい反応は少なかったようです。しかし、賛否両論でもありました。個人的にはこの批評には理解を示したいと思います。何故かというのをお話ししていきましょう。

DTMの発展とボカロ

まず、ayaseはボカロ出身者です。(米津玄師もそうですよね) この点が、宇野氏が『ビートが単調、音圧音色がショボい』と聞こえてしまう原因なんだと思います。

現代のソロやユニットで活動しているアーティストは、自宅のDTMで作成した楽曲でブレイクする形が多いです。世界的なアイコンとなったビリー・アイリッシュも、ブレイクのきっかけはそうですよね。

↓ビリーアイリッシュのトラックリストです。

DTMは80〜90年代からあったのですが、実際一般的に素人が実用出来るようになったのは、00年代からでしょう。これは、PCのスペック向上も一因としてあります。

日本では、その流れに伴い初音ミクで知られるVOCALOIDが00年代から出てきます。サンプリングされた人の声を打ち込んでいくことで、独自の表現が可能なソフトです。これが、アニメ文化と合流することで、1つのムーブメントに成長していきます。

基本的にこのサウンド作りは、サンプル音源等をDTMで打ち込んでいく形が多いと思います。このいかにも打ち込みっぽい音が、宇野氏の批評に繋がっている気がします。ボカロのサウンドは、誤解を恐れずに簡単に言ってしまうと『平面的でチープな音源を、素人っぽい遊び心で並べたサウンド』であることが多いです。これは、PCで完結される閉鎖的な作業環境と日本特有のオタク文化が、そういうサウンドを生んだのでしょう。洋楽を聞くヘビーリスナーからすれば、音源のチープさとぶっ飛んだサウンド(実際に人間が弾くと超テクニカルな楽曲もある)は、理解しにくいのかもしれません。

しかし、これこそが日本独自で発展してきた『ボカロサウンド』ではないかと、私は思います。このボカロとJ-POPの融合が、wowakaやハチの出現に繋がり、YOASOBIにも繋がれてきたのだと思います。アメリカでのビリー・アイリッシュの出現に象徴されるように、才能のある素人が自宅で作成した楽曲でブレイクする時代です。日本でも同様のムーブメントが起こり、YOASOBIはその象徴的な存在となったと見ています。

音楽との関わり方の差

私はアメリカのチャートを賑わすPOPSと、ボカロ文化とJ-POPが融合したYOASOBIはジャンルが違うと考えています。洋楽を聞くと、立体的な音像かつグルーヴを意識しているサウンドであることが多いです。

これは、まずR&Bを主としたブラック・ミュージックが源流としてあるケースが多いからでしょう。『踊れる』ことが重視されてきた環境で、求められる音像の答えが立体的かつグルーヴのあるサウンドだったのでしょう。

対して日本では、民謡のように昔から『歌える』ことが重視されてきました。カラオケが日本発祥だというのも、それを表す1つの事例ですね。その答えとして、メロディアスなサウンドと共感が得られるストーリー(歌詞)が、J-POPの特徴になったのだと思います。

YOASOBIは、現代のJ-POPを示す象徴的なユニット

Ayaseのサウンドメイクのセンスは素晴らしいと思います。音源は特別にいいとは感じませんが、十分及第点な気がします。10年前くらいのサンプル音源はいかにもコンピューターな感じの音源でしたが、今の音源はそれなりに豊かな音色ですし、この位の音の軽さが逆にJ-POPらしさに繋がっている気もします。軽快なサウンドで作られた構成やイメージの着地点は、幾田リラの癖のない伸びやかな歌声とマッチしていますよね。(この楽曲をサラッと歌える幾田リラも凄いセンスの持ち主です)逆にアメリカのR&Bのような立体的で濃厚なサウンドだと、幾田リラのボーカルにマッチしない気もしますね。

ボカロのチープで遊び心溢れるサウンドが、米津玄師、YOASOBIを産むきっかけになったのです。これは世界でも類を見ない、ジャパニーズカルチャーの独自の進化ですよね。ガラパゴス化というやつです。この遊び心こそ、世界でも面白いと評価されるんじゃないかと思います。漫画やアニメと一緒です。

他にもヨシルカやEve、サイダーガール、昔で言えばSupercellなどボカロ出身のアーティストは沢山いますよね。今後もこのシーンからは、面白いアーティストが出て来そうで楽しみですね。

近年、日本の80’sシティ・ポップが海外で注目されています。インターネットの発展、特にYou Tubeのお陰で、世界的にも日本の音楽は注目されつつあるのかもしれません。 FIRST TAKEなんかも、外国人のコメント多かったりしますよね。

FIRST TAKE

私は、このままJ-POPは独自の路線で突き進む方が面白いと思います。今回YOASOBIの考察を行うことを通して、そんな感想を抱きました。


と言う事で、今回はこの辺りで終わりましょう。

またネタがあれば、邦楽を色んな観点から考察してみたいと思います。お楽しみいただければ、幸いです。

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